映像用脚本

2014年12月07日

ショートフィルム用に書いたけどさっぱりボツにされたのでもったいないからブログにアップします。

いい人がいたら一緒に撮りたいなあ。

【幸せは記憶の底に】

ベッドで寝ている男A。
頭には包帯を巻いて、眼帯もしている。
ゆっくり目覚める男A。
男A(…ここは?)
寝ている状態で軽く周りを見渡す。
男A(…どこだ?)
起き上がろうとするが、全身に激痛が走る。
男A「いたい!」
無理して状態を起こすと、ベッドの脇で寝ている女を見つける。
男A(え、誰?)
女が異変に気付き目を覚ます。
目が合う男Aと女。
女は真顔で男Aを見ている。
男A「あの…誰ですか?」
女は少しだけ驚いた顔をする。
男Aはキョトンとしている。
女「…記憶、無いの?」
男Aはまだキョトンとしている。
女「わたしは…あなたの妻よ」
女は優しい笑顔で言う。
男A「え…?」
女「あなた事故にあったのよ。頭を打ったのね、記憶喪失なんだわ」
男A「え…え?俺の?」
男Aは少し混乱している。
女「まだ傷が痛むでしょう?ゆっくり横になってて。いま何か食べるものを持ってくるわ」
女は笑顔で言うと部屋を出て行く。
男Aは出て行く女を見ている。
男A(俺は、記憶が無くなっているのか?でも、何も思い出せない…)

転換

男Aが横になっていると、部屋に男Bと男Cが入ってくる。
男B「おお、目を覚ましたのか」
男C「大丈夫?心配したんだよ」
男B、男Cを見てキョトンとしている男A。
男C「お父さん、ほら、兄さん記憶が…」
男B「あ、ああ…そうか…何も思い出せないのか?」
男A「あ、はい…」
男B「私は、君の、父親だよ」
男C「俺は、兄さんの、弟だよ」
子供に言い聞かせるように優しく丁寧に言う男Bと男C。
男A(俺の…親父と…弟…?)
男Bと男Cは優しい笑顔で男Aを見ている。
女がお盆にお粥みたいなのを持って部屋に入ってくる。
女「あ、お父さんダメじゃないですか。彼、まだ起きたばかりなんですよ」
男B「え?あ、ああ…心配でな…」
女「でも、目が覚めて本当に良かった。死んでしまったのかと思ったもの」
男C「そうだね、兄さんが死んじゃったら、俺たちどうしていいかわからなかったよ」
男B「本当に…、生きていてくれてありがとう」
男C「生きていてくれて、ありがとう」
女「生きていてくれて、ありがとう」
女、男B、男Cは優しい笑顔で男Aを見ている。
男A(この人たちが、俺の…家族?)

転換

食卓。テーブルで朝ごはんを食べている男A、男B、男C、女。
男Aはまだ少し納得のいっていない様子。男Aはそれぞれの顔を見渡す。優しい笑顔で談笑している三人。
男A(この人たちが本当に俺の家族なのか…?思い出せない)
男A「あの」
女「何?」
男A「病院に行きたいんですけど、ちょっとまだ目も痛いし、診て欲しいんですけど」
一瞬真顔になる男B、男C、女。
男A(え?)
すぐにまた優しい笑顔に戻る男B、男C、女。
女「病院には、もう行ったわよ?」
男A「え?」
女「自宅で安静にしていたら治るって、先生が言っていたわ。問題は無いわよ」
男A「え、でも…」
男B「問題が無いのに病院に行くのはおかしいだろう?」
男C「そうだよ、変なことを言う兄さんだな」
男A「え、そうかな…」
女「大丈夫よ、わたしがちゃんと看病してあげるから。安心して?」
男C「もー姉さんは本当に兄さんのことが好きなんだね」
女「えー?当たり前でしょう、そんなの。好きじゃなかったら結婚なんてしないわ」
男B「こらこら、朝からなんだ、見ているこっちが恥ずかしいなあ」
男B、男C、女「あははははは」
三人は笑っているが、男Aだけ納得の言っていないような、無表情。

転換

ソファに横並びで座る男Aと女。
男Aはまだ眼帯をしている。
男A「あのさ」
女「何?」
男A「あれから一週間経つけど、こんなに看病とかしてもらって悪いんだけど、俺、まだ君のことを思い出せないんだ。本当に夫婦なのかどうかも、思い出せないんだ」
女は優しい笑顔で男Aを見ている。
男A「俺、本当に大丈夫なのかな?このまま何も思い出せないんじゃないかって、不安で…本当に、申し訳ないんだけど」
女「どうして?」
男A「だって、俺は、君の名前も、自分の名前すら思い出せていないんだよ?それなのに…」
女「そんなの、名前なんて、どうだっていいじゃない」
男A「え?」
女「大切なのは、わたしがあなたのことを愛していているということでしょう?あなたはゆっくり思い出せばいいわ。わたしは、ずっと変わらないから」
男A「…」
男A(この女は、本当に、俺の…?)

転換

男Aが一人でソファに座っている。眼帯はつけたまま。
男A(本当はまだ思い出せていない。
でも、この感じは覚えている。
妻が、俺のことを愛している感じも、家族の暖かい感じも。
みんなのことは思い出せてはいないけれど、この感じが、きっと正解なのだろう。
これを受け入れて、家族として、また生活をしていかなければいけない。
そうしなければ、俺は、いつまでも思い出せないままのような気がする)
女が部屋に入ってくる。後ろには男B、男C。
女「どうしたの?」
男A(最初は家族のふりでもいいんだ。この人たちを、愛さなければ、俺はここからずっと動けない)
男A「あの、俺、思い出したよ」
女「え?」
男B、男C、女の顔が一気に真顔になる。
男Aは立ち上がり、女に近づきながら話している。
男A「俺、全部思い出したんだよ、全部、みんなのことも全部」
男Aはどんどん女に近づいてくる。
女「そう、思い出したの…」
男A「ああ、だから、俺は…」
男Aは女を抱きしめようとする。
何かが刺さる音がする。ブスッみたいな鈍い音。
ここから男Aも女もアップ。
男A「…え?」
女「あのね、あなたの奥さんは身代金を払う気が無いんですって。残念だったわね」
男A「…え?…え?」
男Aが男B、Cに車で拉致られて誘拐、女が電話で身代金を要求、男Aが激しく抵抗、暴行を加えられて気を失うところまでが早送りで再生。
フラッシュバックみたいなイメージ。
(…そうか、俺は…、この俺の家族は、そうか…)
男は目から一粒の涙を流して崩れ落ちる。
女の後ろ姿。
女「ねえ、楽しかったわね」
男B、男Cは真顔。
女はゆっくり振り向く。優しい笑顔。
女「家族ごっこ」
男Bと男Cの後ろ姿。二人とも手には手錠をしている。

フェードアウト。

おわり  

Posted by 白珠イチゴ at 02:53Comments(0)