春夏秋冬春

2011年10月13日

[春]

まだ肌寒い。
でも、茶色かった地面に若干の緑が芽吹くのを感じる。
柔らかい空気が背中を押すのを感じて、なんの感情も無いのに涙が出た。
行けると思った場所に行けなかった。
途方も無い虚しさと希望に満ちた世界。
まるで異邦人にでもなったかのような気分になりながら、僕は緑を踏まないように歩く。
そこが、落とし穴の罠のような気がしてならなかったからだ。

去年の今頃に戻れたら、現在が変わっていたのかな。


[夏]

知らない間に蝉の声が耳に纏わり付くようになっていた。
去年も読んだ参考書を鞄に詰めて、僕は緑色の上を歩く。
この際落ちてしまえと思い踏んだそれは、全然罠ではなかったのだ。
いっそのこと罠にでも填まってしまおうかと思ったのに、そういうときに限って誰も僕のことを騙してはくれない。
結局、他人はそこまで興味を持ってはくれないもので、だから失敗した僕を気になどしなくて。
みんな僕に優しくしてくれる。
それが本当は全く意味のないことだと感じるのは、きっと当人にしかわからない。
相手を気にしない優しい言葉は、蝉の鳴き声くらい僕にとっては意味の無い音なのだ。
それでも、蝉は鳴いている。
慣れる頃には、聞こえなくなるのかな。

[秋]

自販機でホットココアを買った。
飲むと、心臓の裏側がじんわりと熱くなった。
知らない間に歩くと音が鳴るようになっていた外の世界。
それは、もうすぐ時間が無くなること知らせる音だった。
ちゃんと、できたのかな。
ちゃんと、できているのかな。
意味の無い自問自答が繰り返される頃には、もう誰も僕には構わなくなっていた。
歩かなければ、音は鳴らない。
音が鳴らなければ、きっと時間は無くならない。
そう思いたかった。


[冬]

固い空気が身体を覆うのを感じる。
去年も着ていたコートを今も着ている。
僕は、縁起を担ぐ方じゃないから。
これが駄目だったら諦めようと思う。
試験会場でたまたま隣に座った制服を着た黒髪の女の子が可愛かったから、なんかもうそれでいいような気がしたんだ。
別に、どうでも。


[2回目の春]

なんでか僕は、去年いたかった場所に立っている。
あの頃あんなに魅力的に感じたこの場所は、なんだか色褪せてしまったような気がして溜め息が出た。
まあ、いいか。
大して美味しくもない学食のたぬきうどんも、金色の髪の毛に目の周りを真っ黒に縁取ったあの女の子も、すべて。
少しだけ薄目にすれば、大抵のことは美しく見えるのだから。



×××;)

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Posted by 白珠イチゴ at 22:58 │Comments(1)★描いたり書いたりしたもの★
◆この記事へのコメント
酒も薄めにすればいいんですよ。。

 ご無沙汰です。。

今度飲みに行きましょうよ。。。
Posted by Q at 2011年10月18日 23:26
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