眩暈

2012年11月11日




手を伸ばしても。

手を伸ばしても。

まったく届かない。

捕まえようと必死に足掻いても。

まったく前に進めない。

足が、どんどん地面に沈んでいく。



あの人は、笑っていた。



俺は、泣いていた。






苦しさが辛くて無理矢理目を覚ました。
時計を見るとまだ2時だ。
外は暗い、夜中の。
最近よく見る嫌な夢は、決まって愛しい人が出てくる。
そして、必ず笑いながら離れていく。
考えられない、考えたくもないものを突きつけられるその夢に、俺の身体はじんわりと汗ばんでいた。

サイドテーブルに置かれたミネラルウォーターをがぶ飲みしても、鼓動は収まらない。
「……っ」
ふいに出たその名前の人は、この部屋にはいない。
無性に会いたい。
会って、ここへ閉じこめてしまいたい。
俺だけに、その笑顔を向けてほしい。

叶わぬ願望を思ったとしても虚しいだけ。
あれは、【みんなのおもちゃ】だから。

そう、みんなの。

「……っ」
口に出して。
もう一度、声に出してみた。

会いたい。
会いたい。
会いたい。

自分がこれほどまでに独占欲の強い人間だったんだと、彼と付き合うようになって思い知った。
誰が離れようがどうしようが、気にもならなかったのに。

と、携帯電話が鳴っていることに気付いた。
画面を見て、少し驚く。

「もしもし?」
「おお、起きてるか?」

電話の主は、まさに今考えていた男だった。

「どうしたんですか? 珍しい」
「いや、今飲み会に来てて、けどなんかよくわかんない女の子がいっぱい来ちゃって……」
「ふふ、辛くなったんですか?」
「うーん……なんかねー、普通に呑みたかったんだけどね」
「帰ったらいいじゃん」
「お前は? 今なにしてんの?」
「僕ですか? 寝てましたよ」
「あ、ごめんね、なんか……」
「いえ、大丈夫ですよ」
「あの、今からお前の家行ってもいい?」
「ん、なんで」
「いや、嫌やったらいいんだけど……」
「嫌じゃないですよ、明日休みだし。どうぞ」
「ほんと! だったら酒買って今から行く!」

たぶん自意識過剰かもしれないが、彼の声が一気に明るくなったように感じた。
自然と笑ってしまう。

「なんだよ、何笑ってんの」
「いや、僕が家であんたが外って状況がなんかおもしろいなーと思って」
「ああ、そういやそうだね」
「まあ、早う来てくださいよ。待ってるから」
「おう」

電話を切り、こういうのって運命って言うのかとうっかり思ってしまった。
そういえば最近はあの人が自分から連絡をくれるようになった。
きっと、彼は普通に恋愛をしているのだろう。

恋愛なんていずれは朽ちる。
そんなことは知っている。
永遠に続けるためには情が無ければ無理なのだ。

俺と彼の場合は、きっと逆だった。

その感覚は、きっと夢を見ているような。



<終>



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Posted by 白珠イチゴ at 02:05 │Comments(1)★描いたり書いたりしたもの★
◆この記事へのコメント
夢じゃないよ。
なんで自分で自分にフタをするの??

俺平塚に住んでるんだよ。

 いつか来な?

日本一治安が悪いところに。。。
Posted by Q at 2012年11月11日 21:59
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